悪党の事情 〜約束の刻〜
ディール領家による商都への急襲から遡ること約二年、商都カレリアの片隅で、とある邂逅があった。
かけ違えたボタン、果てのない追いかけっこ、日々つのる焦燥、そして、期限はあと一年。
すべてが終わったその後で、一人の孤独な悪党が北の最果てで見たものは──。
物語は、とある娼婦がラトキエ領家に請け出されたことから始まる。
客の暴行により手足が不自由となった娘はしかし、その生来の素直さで、周囲の荒んだ在りようを、穏やかに柔らかに変えていく。そして、始まる平穏な日々。
だが、約束の時は、刻一刻と近づいていた。
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