せんせいは、もりの、おいしゃさんです。
すそのながい、はくいをきて、くろかわのかばんを、ぶんぶんふって、いつもにこにこ、あるいてきます。
「おやおや、ぽんた。どうしたね」
ぽんたは、りょうてで、まあるいおなかを、おさえています。
「おなかが、なんだか、しくしくいたいよ」
「ふむ、これはいかんな」
せんせいは、くろかわのかばんから、しろいつつみをとりだして、ぽんたにのませてあげました。
「せんせい、ありがとう。なおったよ」
ぽんたは、ふさふさのしっぽをふって、はなうたで、かえっていきました。
「おやおや、くまごろう。どうしたね」
くまごろうは、ぶっというでを、おさえています。
「そこのきりかぶで、すりむいちゃって」
「ふ〜む、これはいかんな」
せんせいは、くろかわのかばんから、なんこうをだして、うでにぬってあげました。
「せんせい、ありがとう。なおったよ」
くまごろうは、ぴん、とうわむきのくろいしっぽと、けがわのおしりをぷりぷりふって、
どすんどすん、と、もりにかえっていきました。
「おやおや、ミー。どうしたね」
ねこのミーは、おなかを、りょうてで、おさえています。
「せんせい、おなかがいたいよ! とっても、いたいよ!」
ミーは、りょうてをめにあてて、わんわん、わんわん、ないています。
せんせいのかおいろが、さっとかわりました。
「むむ。これはいかん! とってもいかんぞ!」
さあ、たいへんです。
せんせいは、くろかわのかばんから、せんすいかんをとりだしました。
せんすいかんは、せんせいの、とっておきの ひみつへいきです。
「ちょっと、いってくる」
せんせいは、はくいのうでを、ぐい、とまくって、せんすいかんにのりこみました。
せんすいかんは、みるみる、ちいさくなっていき、あっというまに、こめつぶのおおきさになりました。
「さあ、ミー。おくちをあけて」
ちいさくなったせんせいが、おーい、と、りょうてをふっています。
ミーは、あんぐり、おくちをあけて、ぽい、とせんすいかんを、のみこみました。
せんせいは、きりっとまえをむき、そうじゅうかんをにぎります。
からだのなかにレッツゴー!
せんせいがのったせんすいかんは、ぐんぐん、からだを、すすんでいきます。
のどをとおり、いぶくろをとおり、まがりくねった、ちょうをとおり──
すると、どうでしょう。
うすぐらい すみっこのほうに、あかいイガイガがいるではありませんか。
「みつけたぞ! わるさをしていたのは、おまえだな!」
せんせいは、くちをへのじにまげて、おおきなあみを、とりだしました。
あかいイガイガを、あみで、ひょい、とすくいとり、おくちを、あんぐり、おおきくあけます。
うにゃうにゃあばれるイガイガを、ぱくり、とたべてしまいました。ばりばり、かみくだいてしまいます。
「にんむかんりょう!」
せんせいは、まんぞくそうにうなずいて、せんすいかんに、のりこみました。
ミーのおくちからでてくると、せんすいかんは、むくむくむく……と、もとどおりになりました。
てんじょうのふたが、ぱかっ、とあいて、せんせいが、よいしょ、とでてきます。
「もう、だいじょうぶ」
にっこり、ミーに、いいました。
「せんせい、ありがとう。なおったよ」
ミーも、にっこり、てをふって、もりに、かえっていきました。
おしまい
〜 イガイガたいじ 〜
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