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しあわせのありか

『 しあわせのありか 』
 ☆ ひらがなの ぺーじを みる!

しあわせのありか

 
 
 そこは、平和な国でした。
 緑の大地は美しく、町には笑いがみちあふれ、人々はたいそう幸せでした。
 ところが、ある日、まっ黒な雲が現れて、空を覆ってしまいました。
 作物はとれなくなり、倉庫に蓄えた食料も、みるみる内に減っていきます。
 
 王様は、お触れを出しました。
「下々の食料をとりあげよ」
 貧しい暮らしの人々が、飢えて死んでいきました。
 宮殿内の食料は、すぐに、なくなってしまいました。
 
 王様は、お触れを出しました。
「下々の食料をとりあげよ」
 普通の暮らしの人々が、飢えて死んでいきました。
 宮殿内の食料は、すぐに、なくなってしまいました。
 
 王様は、お触れを出しました。
「貴族の食料をとりあげよ」
 宮殿内の食料は、少しだけ長もちしました。
 貴族たちは大きな倉庫を持っていたからです。
 けれど、宮殿内の食料は、やがて、なくなっていきました。
 
 王様は、お触れを出しました。
「貴族の食料を没収せよ」
 倉庫の食料を出し渋っていた貴族たちが、飢えて死んでいきました。
 宮殿内の食料は、少しだけ長もちしました。
 貴族たちの食料庫は、とてもとても大きかったからです。
 けれど、宮殿内の食料は、やがて、なくなっていきました。
 
 
 町に、人はいなくなり、貴族もみんな、いなくなり、国の中で人がいるのは、宮殿の中だけになりました。
 けれど、大勢で食べるものだから、宮殿内の食料は、だんだん少なくなっていきます。
 王様は、お触れを出しました。
「宮殿内の食べものを、全部ここへ持ってこい」
 最後の食料をさしだして、王に仕える召使いも、バタバタ死んでいきました。
 王様の妻と子も、次々死んでいきました。
 風邪をひいても、診てくれるお医者さんがいなかったのです。
 
 
 がらんと広い宮殿には、王様の他には、だあれもいない。
 食べるものはどっさりあるのに、くる日もくる日も一人ぼっち。
「どうしてだろうな」
 山と積まれた食事を前に、王様は首をひねります。もう、心配なんか、しなくていいのに、
「なんだか、ちっとも、おいしくないんだ」
 
 
 

 
〜  しあわせのありか  〜
 
 
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