【 thanks-SS.01-080208 】 『ディール急襲』第U部 第3章1話「心の在りか-01」終了時
「いぃやぁぁあー! 助けてぇぇー! ケネルぅー!」
エレーンは必死で逃げていた。しかし、ケネルは、
「……」
例の雑誌を読書中。胡座(あぐら)で頬杖を付いたまま 微動だにしない。エレーンはグーの拳をブンブン振って、ケネルの周りをグルグルグルグルグルグルグルグル一周、二周、三周──
「ケネルー無視しないでよーっ! 助けてってばあっ! 早くぅー! 早くぅー! はっやっくぅぅぅーっ!!!」
しかし、それでも、ケネルは、やっぱり、
「……」
じぃ……っ、と不動のまま動き出す気配さえ見せない。
あたかも石像か何かのようである。しかし、よく見ると、胡座(あぐら)の下で、何やら数を指折り数えてはいるようだ。エレーンの悲鳴はますますヒートアップ。
「ケネルー! ケネルー! ケネルってばあー! ケっ・ネっ・ルぅーっ!!!」
読んでいた雑誌をクルクル丸め、ケネルはおもむろに顔を上げた。腕を伸ばして、雑誌で "それ"を、バン──と叩く。エレーンは両手を打ち合わせた。そして、破顔一笑、
「きゃぁぁああ♪ ケネルー! 素敵っ! 頼もしーっ! 男らしーっ!!!」
ケネルは、きょとん、と彼女を見た。膝元に転がっているのは、コロリン……と丸まった小指の先ほどの蜂一匹。
" 戦神ケネル " 、彼女の絶賛を浴びるのは、実にこういう時である。
− おしまい −
お粗末さまでございました。 (*^o^*)
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