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世界で一番、せつなく愛しいラブレター


 世界で一番、せつなく、愛しいラブレター  
〜 お父さんのうた 〜

 
 
愛しているよ、
愛しているよ、
いつでも君を想っているよ。
お腹をすかせて泣いてはいないか。
寂しい思いをしてやしないか。
 
君のことなら、ぼくはなんでも知っているよ。
どんな顔して笑うのか。
どんな顔して怒るのか。
どんな顔して眠るのか。

なのに、どうして、
あいつと行く、なんて言うんだい?
ぼくほど君を、愛する奴なんて、いないのに。
 
本当は、ずっとここに、いて欲しい。
誰にも君を渡したくない。あんな奴には、やりたくない。
ぼくのそばにいた方が、よっぽど守ってやれるのに。
 
一等賞の賞状をもらって、ぼくは君が誇らしかったよ。
誕生日にネクタイをもらって、ぼくはとても嬉しかったよ。
今でも、はっきり覚えている。
午後の玄関に投げだした、君の赤いランドセル。
夏の縁側で脱ぎすてた、ひっくり返った運動靴。
お母さんに叱られて、壁のすみっこで、すねてた泣き顔。
小さな手を握りしめ、寝汗をかいて眠った顔を。
 
仕事が引けると大至急、君の産院に駆けこんだ。
夏がきて、秋がきて、冬がきて、春がきて、
一年がめぐり、三年がゆきすぎ、
砂場にしゃがんで赤い小さなシャベルで遊び、
小学校の門をくぐって、
運動会で駆けまわり、
桜に送られて卒業し──
白い産着にくるまれた、小さな愛しい赤ん坊。君は、いつしか大人になった。
 
スポットライトに包まれて、今、君は笑っている。
皆が集う会場の、祝福の拍手につつまれて。
白いベールにつつまれた、世界一かわいい、幸せな花嫁。とっても、きれいだ。
 
奴と一緒に、君が花束を渡しにきた。
「今まで、ありがとう、お父さん」
 
愛しているよ
愛しているよ
いつでも君を想っているよ。
他の奴になんか、やりたくないよ。
 
お父さんは、嬉しいよ。
 
 
 
 


〜 世界で一番、せつなく、愛しいラブレター 〜
 
 
 
 
 
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