それは緑の丘の上。
お日さまぽかぽか降りそそぐ、ふかふかあたたかい草原で、大の字になって眠ってた。
いつの間にか、なくしたシッポ。
こいつがなくても、何が困るってわけじゃない。
目だって見えるし、音だって聞こえる。
匂いだってかげるし、声だって出る。
でも、何かが欠けている。
うれしい時、悲しい時、怒った時、寂しい時、分かち合うものがなかったから。
欠けたものを知らずに探して、他人顔の人波をさまよい歩いた。
喧嘩にあけくれた街の中、
ひなびた路地のごみ箱の裏、
すさんだ目つきで、うろついた。
そして、自分が何を探していたのか、ほとほと忘れかけた頃、やっと、こいつを見つけだした。
ニャン太の、ふさふさの、ご自慢のシッポ。
だから、いつでも、きれいに洗う。
こいつがご機嫌でいるように、ご飯だって、どっさりあげる。
お日さまぽかぽか道の上、お手々つないで、ご機嫌で歩く。
でも、こいつは落ち着きがなくて、すぐにどこかへ行ってしまう。
だから、そわそわしたら、首根っこつかみ、
駄々をこねたら、おんぶして、
夜にはかかえて、まあるくなって眠る。
もう、誰にも、わたさない。
〜 ニャン太のシッポ 〜
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