【 thanks-SS.05b-080818 】 『ディール急襲』第U部 第3章3話「遠音-11」終了時
 
 

好意の行方 ( 2/2 ) ( 前話 @ を見に行く )

  
 そして、それから数日後、今度はワタリ本人から "それ" を渡され、ケネルは又も固まっていたのだった。
 だって、手の中にはずっしり重たい白い箱。そう、やーっと処分したかと思ったら、又も甘菓子の土産なんである。
( なんで、俺にこんな物を? なんか嫌われてんのかな )
 ケネルには最早嫌がらせとしか思えない。無言で固まるケネルを前に、ワタリは上目使いで顔色を窺う。
「あ、あのぉ〜? 隊長ぉ〜? ( ああ、あんなに眉間に皺が。もしや、機嫌が悪いんだろうか ) 」
「──あ、ああ、なんだ、ワタリ ( 怯えてる? ) 」
「ええ、いえ、……あのぉ〜…… ( 隊長、案外こういう菓子は嫌いだったりなんかして。いや、でも、この前は、街道くんだりまで、わざわざ買いに来たんだしな? ) 」
「ん? なんだ? ( 笑顔で優しく笑顔で優しく笑顔で優しく…… ) 」
「──い、いえ、なんでもないっす…… ( やっぱり、もっと、たくさん買って来るべきだったかな。そうだよな〜。これっぱかしじゃ、すぐに食っちまうもんな〜 ) 」
「……む? ( なんなんだ? ) 」
 ワタリは元気なく肩を落として、はあ……と溜息をついている。見るからに気落ちした面持ちで。ケネルの頭は ? でいっぱい。
「……どうか、したのか?」
 気持ちが悪いので、ケネルはそろそろ訊いてみる。しかし、ワタリは、
「あ、いえ、なんでも。 ( ああ、俺ったら、なんて気の利かない ) 」
「……む?」
 眉根を寄せて沈黙し、ケネルは、ふと思い当たった。
( もしや、ファレスにチクったのがバレたのか? )
 街道で、のびのび羽を伸ばしていたことを。ケネル隊長、腕組みで思案。
( こいつ、意外と繊細なんだな…… )
 ワタリがおもむろに頭を下げた。
「じゃあ隊長。俺、そろそろ行きますわ…… ( ああ、俺のばか ) 」
「──ああ、ワタリ、ちょっと待て」
「は、はいぃぃ!? ( たたたた隊長が俺に?隊長が俺に?隊長が俺に? ) 」
 間違っても恐がらせたりしないよう、ケネルは務めて ( あくどく見えない ) 笑みを作った。
「今度一緒にメシでもどうだ。 ( 少し機嫌でもとっとくか ) 」
「は、はいっ! 喜んでっ! ( くーっ! 持ってきて良かったー!!! ) 」
 そして、ケネルは
「…… ( どーも、よくわからん ) 」
 ワタリはるんるんスキップ状態で走っていく。幸せそうなその背を見送り、ケネルは腕組みで首を捻った。
 ケネル隊長、部下の気持ちがイマイチ分からない、今日この頃である。
 
 そして、翌日、街道の町の、とある菓子店の店先には、
「──あ、おばちゃん、そっちの端っこのヤツも一個入れといてね♪」
 ショーケースに身を乗り出し、隅っこに鎮座するこんもり丸い黄色い菓子を、ほくほく指差すワタリの姿があったのだった。懐の財布を探りつつ、隊の駐留方向の夏空を、るんるんウキウキ眺めやり、
「隊長、喜んでくれるかなあ〜?」
 ランチの約束まで取り付けて、ワタリは、このところ、とっても、とっても幸せである。

 
( おわり )
 
 
 
 

 お粗末さまでございました。  (*^o^*)


( INDEX / ディール急襲TOP / Side Story TOP )


オリジナル小説サイト 《 極楽鳥の夢 》