【ディール急襲】thanks-SS

番外編2 INDEX 181222 】
 

エレーンのるんるん滞在記

 

 【その6】
 ぜえぜえ壁に引っ付きながら、引きつり顔でねめつけた。
 トーノは頭を掻いて困惑顔。
 
「……喜ぶと思ったんだけどな」
 
 そう言い、塀沿いの雑草にしゃがみ、立ちあがって、振りかえる。
 はい、とその手を差し出した。
 
「さっき、ここで見つけたからさ。好きでしょ、女子は。こういうの」
 
 て、この雑草をどうしろと?
 葉っぱが四枚ついている。
 
「四葉のクローバーを見つけると、幸運が訪れるっていわれてるんだ。だから、君にと思ってさ」

 トーノは照れくさそうに目をそらす。

「だからさ。きっと帰れるよ、元の世界に。それで、ついでって言っちゃなんなんだけど──」
 
 ふと、言いかけた口を閉じ、あれ? とトーノが店を見た。
 
 店の裏口が バン!と開き、ツカツカ誰かがやってくる。
 剣呑な気をまき散らして。
 立腹の足取りで歩いてくるのは、誰あろう、店にいた──
 
「……は? ケネル?」
 
 ずい、とケネルが割り込んだ。
 ぐいぐい、こっちを後ろに押しやり、トーノに剣呑に顎をしゃくる。
 
「ちょっと来い」
 
 このところの度重なる妨害に、なんだよ、と業を煮やしたトーノと、
 見るからに不機嫌な腕組みケネル。
 
 ずぅ〜ん、と対峙した二人の間に、ピリピリ空気が張りつめる。
 
 エレーンはきょろきょろ交互に見た。
 そういやケネルは不機嫌だったが、ついに、まさかの、
 
 物言いか?
 
 
 

 ( 前頁 / ディール急襲TOP / 次頁 ) web拍手
 


オリジナル小説サイト 《 極楽鳥の夢 》