番外編2 INDEX 181218 】
 

エレーンのるんるん滞在記

 

 【その5】
「チョコは好き?」
 と聞かれれば、それはもちろん大好きであるので、
「ありがとねー」
 とにっこり笑い、トーノの手から受け取った。
「どういたしまして」と、トーノもにこにこ。
 
 一方、ケネルはぶすっと渋面。
 もう、あからさまに面白くなさげ。
 ちなみにチョコが欲しかったとか、そういう理由では多分ない。
 トーノときゃいきゃい笑っていると、
 ずいと横から割って入るし、なんでかうろうろ歩き回るし、急にあからさまに妨害するし。
 
 そんなある日のことだった。
 店の裏口から顔を出したトーノが、手でチョイチョイこっちを呼ぶから、
(え? なになに?)
 と寄って行った。
 ケネルには内緒で 「ちょっときて」 の合図。
 ああ、まったく、さもありなん。なんかケネルが不機嫌だから。
 
 きょろきょろトーノは店内を見まわし、ケネルが店先にいることを確認すると、
(今のうち!)といわんばかりに、ぐい、と手首をすばやく取った。
 
「こっち」
 
 トーノは手首をつかんだままで、ずんずん道を歩いて行く。
 急ぎ足で、振り向きもしない。
 見た目は子供の顔つきのくせに、なんだかいやに力強い。
 呆気にとられて見つめた脳裏に、なんでか賊に絡まれ続けた過日の悪夢がよみがえった。
 
「ちょ、ちょっと!? どこに連れてく気!?」
 
 ぞわり、と怖気がこみ上げて、手を外そうと躍起になる。
 けれど、手が外れない。
(どこに連れて行くんだチビっ子基地か!?)
 でも、トーノの力は、いやに強い……。
 
(……げ!?) とようやく現状を把握し、あわあわ動揺おろついた。
 いやいやまさか、とは思うのだが、今度はトーノに
 
 どっかに監禁されるとか──!?
 
 
 

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