CROSS ROAD ディール急襲 第2部 3章 9話4
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 きちんと別れを告げねばならない。一緒にいる理由は、もう、ないのだから。でも──!
 声が全く出なかった。心が激しく抵抗している。別れなんか告げたくない。
「さよなら、奥方様」
 ケネルは素気なく背を向けた。
 涙で霞んだ視界の中で、皆と共に踵を返す。傭兵姿の一団が長い廊下を去って行く。
 ── あんたの居場所に、とっとと帰んな。
 
 溺れ、喘いで目が覚めた。薄暗いゲルは寝静まっている。胸の動悸が苦しいほどに激しい。土間の炉火はとうに落ち、天窓からの月光だけが、火の気のない鉄瓶を白々と照らし出している。
 向こうを向いた仄白い輪郭が深夜の暗がりに沈んでいた。光の届かぬ陰の中、ケネルは壁に顔を向け眠っている。
 浅い呼吸を繰り返し、エレーンは寝床に身を起こした。暖かい布団からそっと抜け出し、冷たい絨毯をひたひた歩いて、ケネルの脇にしゃがみ込む。ケネルは深く眠っている。あんな冷酷な指示を出したとは未だに信じられない普段通りの静かな寝顔だ。エレーンは気鬱に嘆息した。何故、あんな夢を見たのだろう。珍しく面と向かって叱られたせいだろうか。何故一人で対処する、と昼にケネルに諌められ、とっさに強く反発した、あの時の想いが蘇った。
「……だって、あたしは、」
 あの時呑み込んだ言葉の先を、心の内で続けてみる。
 ──だって、あたしは最後の最後で " あの手 " を離してしまったから。
 よりにもよって一番大事な時だった。時を経た今となっても、それはまざまざと鮮烈で、息が詰まるくらいに苦しくて、思い出せば痛みを伴う。それは二度とは癒えぬ生傷の記憶だった。
 訊いたところで詮ない問いだ、それは分かっていたけれど、それでも尋ねてみたかった。薄暗く寝静まったシンシン肌寒いゲルの中、一人ひっそり膝を抱えて、眠る相手に問いかける。
「……ねえ、ケネル」
 一人で死ぬのって、どんな気分だと思う?
 
 
 戸口のフェルトは上げられている。四角く切り取られた壁の向こうでは、日差しの当たる疎らな短い草の上、パン屑を啄ばむ鳥達が跳ね、草原の爽やかな朝風が緩やかに室内に吹き込んでくる。いつもと変わらぬゲルの朝。
「……食欲、ない」
 エレーンは溜息でフォークを置いた。目の前には、ほとんど手つかずの朝食の皿が並んでいる。両手でもそもそ膝を抱えて、その上にくったりうつ伏せる。昨日の樹海の光景が頭に焼きついて離れない。一面血潮に濡れた森、血溜まりの中に落ちた指、そして恐らく、下草の中に転がっていたであろう千切れた手足、服地に包まれた体の一部──。
 食べ物の匂いに吐き気が込み上げ、慌てて席を立ち上がった。靴脱ぎ場備え付けのサンダルを突っかけ、小鳥を蹴散らし外へ出る。慌てて壁際にしゃがみ込んだ。昨夜から碌に食べてないから、何も出てこなくてたいそう苦しい。それでも唾液ばかりを吐き戻していると、ゲルの中から誰かが出てきた。突っ立った脚横に、片手でぶらさげたヤカンが見える。ヤカンの取っ手を握ったその手で一緒にコップを持っている。肩にタオルを引っ掛けて、ファレスが面倒そうに立っていた。無言でコップに水を注ぎ、壁に屈み込んだ顔前に、無造作な手付きで突き出してくる。
「口すすげ」
 相変わらずの仏頂面だが、珍しく悪態をつくでもない。礼を言ってコップを受け取り、それで何度か口をすすぐ。体の力が抜け切ってしまい、しゃがみ込んだまま受け取ったタオルに顔を埋めた。緩く抱えた膝の上、のろのろ顔を傾ける。日差しを仰ぐとクラクラした。朝の明るい太陽は、惨めな気分と裏腹に、晴れがましいほどに清々しい。
 食卓を囲む三人とも、普段とまるで変わらなかった。何故平気で食えるのか不思議だ。凄惨な樹海の光景を目の当たりにした後だというのに。ケインの処分を指示したケネルも普段と何ら変わらない。今も捜索が続いているのに、のんびり食事をとってる間にもケインが恐ろしい目に遭わされているかも知れないのに。発見次第処分するよう指示を出したのは他でもない彼なのだ。なのに、静かな横顔に影はない。僅かな陰りさえも見当たらない。
 ケネルの指示に全く納得がいかなかった。この処罰は重すぎる。相手は善悪の判断もつかない、年端もいかぬ子供なのだ。確かに過剰防衛ではあるけれど、そもそも襲撃を仕掛けてきたのは、あの賊達の方なのだ。無論その旨、声を嗄らして訴えた。だが、誰一人異議を訴えない。ケインを誰一人かばわない。そうした考え方を、彼らはしない。
 誰も彼もが如何にも手慣れた様子だった。その異様なほどの平静さに、何か不気味な違和感を覚える。もしや彼らはこちらで勝手に思うより、余程残忍な日常を平気で送っているのではないか──。
 決定が覆る事はついになかった。今日の移動は中止になった。逃亡したケインの捜索を、昨日に引き続き、同行者総出で行っているのだ。伴い、こちらはキャンプで待機だ。
 朝食を終えると、黙々と食事をとっていたウォードが、ふらりと外へ出て行った。誰に何を言うでもない。彼はこのところ、ずっと無口だ。例の愛馬を傍に置き、木陰で脚を投げ出して、いつも一人でぼんやりしている。そうして、腕を持ち上げてみたり、時折首を捻ってみたり。体がどうにも馴染まない、怪訝そうな彼の顔はそんな事を思っているようだ。
 食事の片付けもあらかた済んで、各々荷物の整理などをしていると、戸口で「隊長」と声がかかった。ケネルが見やって立ち上がり、おもむろに足を向ける。頭を屈めて靴脱ぎ場に入ってきたのは、キャンプでは珍しい顔だった。ゴツイ顔立ちの真ん中分け、青々とした割れた顎。アドルファス配下の班長の一人、アーガトンだ。その腕に巻かれた真新しい包帯が目を引いた。
( ──まさか )
 はっと気付いて、エレーンはどぎまぎ立ち上がった。昨日まで包帯なんか巻いてなかった。あの怪我ケインがやったんじゃ。樹海の捜索はもう済んで、それならケインは、もしや、もう──?
「アーガトンさん! あ、あの、その腕の怪我って──!」
 包帯を指差し、ぎこちなく問えば、アーガトンはきょとんと腕に目をやり、ああ、これか、と照れたように笑った。「──ちょっと、しくじっちまってね」
 聞けば、野営地が賊の襲撃を受けたとの事だった。怪我はその時に負ったもの。それで、その件も合わせて、ケイン捜索の進捗状況を報告しに来たようだった。つまり、ケインはまだ発見されてはいないのだ。その他、二、三の報告を手早く終えると、アーガトンは長居をするでもなく引き上げた。
 丸壁の隅で膝を抱えて、エレーンは気鬱に溜息をついた。ケインの安否が気になって気になって仕方ない。今頃どうしているだろう。ケインはとても衰弱していた。発熱していて酷く弱々しい有様だった。日がな待機で手持ち無沙汰ではあるけれど、トランプ等で暇潰しするような気楽な気分には到底なれない。向かいの壁ではさっきから、ケネルとファレスが布やら缶やら道具を広げ、刃物の手入れを始めている。憎たらしいほどに普段通りの顔で。ともあれ、珍しく二人並んで座っているのに、何故か大して喋らない。それぞれ黙々と作業をしている。もしや、取っ組み合い寸前で取り止めになった昨日の一揉めが尾を引いて──? いや、でも、たまに道具の貸しっこなんかしているし、「それとって」とかやってるし。けれど、そうした反面、いつまで経っても、
 黙々
 黙々
 黙々──。
( ……よく飽きないわねえ )  ← ※自分が飽きた。
 頬杖で観察していたエレーンは、げんなりと溜息をついた。彼らはなんにも喋らない。世間話とか面白い話とか一切しない。あれが地であるようなのだが、あんなにむっつり黙り込んでて一体何が楽しいんだか。
「──ねえ、」
 あまりの静寂に堪りかね、ちょっと声をかけてみた。二人は無言、無視である。呼ばれたのは自分ではない、とそれぞれ認識したらしい。ああ、そう、そっちがそういう態度なら──。
「ねえねえ、ケネルぅ〜」
 名指しで呼んだ。きっちりと。
 ケネルは無言。何故かセッセと急に道具を磨き出す。動きがあからさまに慌しい。むっとエレーンは見返した。
「ねえねえ女男! ねえってばっ!」
 今度は標的を隣に定める。ファレスはケネル同様、素知らぬ顔で手入れに精を出していたが、長い長い沈黙の末に、ようやく憮然と振り向いた。
「──んだよ、うっせーな」
 ギロリと睨むも負けである。不本意そうなその顔には ( 別に用なんかないくせによ〜 ) と感想が憎々しげに書いてある。大当たりである。
 何事も起こらぬままに時は経ち、穏やかな午後が過ぎていく。浅いまどろみからふと覚めて、うつ伏せた膝から顔を上げれば、辺りはひっそりと静かだった。
「ねえ、ケネ──」
 惰性で呼びかけ、ふと口をつぐむ。道具の手入れをしていた二人は壁にもたれて腕を組み、それぞれうなだれ目を閉じている。いつの間にか居眠りをしていたようだ。仕方がないので、昼寝の二人を起こさぬように、エレーンはそっとゲルを出た。
 薄曇りのお日様の下、両手を上げて伸びをした。暇潰しにぶらぶら歩く。キャンプの中には人けがなかった。ひっそり静まり返っている。馬も犬も出払っている。皆、放牧に行ったのだろう。だだっ広い草原にホーリーがポツンと草を食んでいたので、ゲルの裏手に回ってみると、案の定ウォードが長い脚を投げ出して、壁にもたれてぼんやりしていた。空を仰ぐ硝子の瞳は考え事をしているようで、何もかもが鬱陶しそうに見えて、なんとなく話しかけるのはためらわれる。
 隣のゲルの丸屋根に、いつも着ている民族衣装がぺったり広げて干してあった。昨日はキャンプに到着するのが遅くなり、洗濯物がまだ乾いていないのだ。だから今日は久方ぶりに自前の服。それについてはファレスが当初渋ったが、日がな一日寝巻きでいるんじゃ、ちょっと外に出るにも不便だし、移動が中止になった事情もあって、結局は渋々ながらも承知した。因みに、洗濯を快く引き受けてくれたこのキャンプの座長によれば、屋根で干してる民族衣装は「ハージ」という名であるそうだ。 ともあれ、あの、、クリスからの借り物なのに、又も盛大に汚してしまった。しかも事もあろうに人の血で。あの光景を思い出し、エレーンは気鬱に嘆息する。
「……ケイン」
 ずっと気掛かりだったその名を呼ぶと、胸が不安にざわめき立った。あんなに具合が悪そうだったのに、どこを彷徨っているのだろう。たった一人で泣きながら、樹海に隠れているのだろうか。それともキャンプに戻ったろうか。いや、連絡が既にいったとしたら──。
「……そうか。だから、ケネルは」
 不意に気づいて血の気が引いた。それではキャンプに戻れない。ケネルが処分を指示した瞬間、帰る場所は消え失せたのだ。もう、行き場はどこにもない。ケネルの罵倒の意味するところを今更ながら思い知る。

『 ここで終わらせてやる方が、あいつには余程楽だったろうに 』

 まだ幼い小さな子供が今も怯えて逃げ回っている。大勢の恐ろしい大人に追われて、どんなに怖い思いをしているだろう。どんなにひもじいことだろう。けれど、自分の力では、ケネルを翻意させることができない。何もケインにしてやれない。手をこまねいて見ているしかない。彼らが大挙して追い詰めていくのを、徐々に弱っていくであろう小さなケインを。
 無力さに胸が塞いだ。何とか彼を逃がしてやりたい。せめて力いっぱい抱き締めてやりたい。何故、いつものように自分に呼びかけてこないのか。そんなに自分は頼りないのか。どこにも行き場がなくなっても、自分の事など思いつきもしないのか。せめてケインの現状が分かれば、手の打ちようもあるだろうに。いつものように連絡さえ取れれば──
( ──そうか ) と唐突に気がついた。当のケネルが近くにいては、現れた途端に捕らわれてしまう。それどころか、あっという間に殺されてしまう。それで出て来られる道理がないではないか。
 己の迂闊さに唇を噛んだ。耳の奥で、いや、頭の深い片隅で、ずっとずっと呼ばれている気がする。ごくごく微かな弱々しい気配。梢を吹き抜ける風の音だったかも知れない。けれど──

" 助けて。恐いよ "

「──ケイン」
 ビクリ、と樹海を振り向いた。
 
 
 ケインの声が自分に聞こえるというのなら、その逆も又、可能かも知れない。こちらからケインに呼びかければ、或いは──。
 樹海の風道を駆けていた。思い立ったら、矢も立ても堪らなかった。
「ケイン、いたら返事をして!」
 小声で木立に呼びかける。樹海がさわさわ鳴っていた。さまよう自分の足音だけが静かな樹海にサクサク聞こえる。樹海の風道を大分進んで獣道に分け入ると、カサ、と小さな音がした。
「──ケイン」
 その姿に息を呑んだ。ぶかぶかの服を着た、頼りない小さな体。透き通るように青白い顔で、下草の中に立っている──。
 すぐさま地を蹴り駆け寄った。下草に滑り込んで膝をつき、華奢な体を両手で抱き取る。名前を呼んで頬ずりすると、華奢な体が遠慮がちに身じろいだ。
「ぼく、おばちゃんが、しんぱいしてる、とおもって」
 たどたどしくそう言って、ケインはしょげたようにうなだれた。「……ごめんなさい。ぼく、やくそく、まもれなかった」
 途方に暮れたあどけない謝罪に、胸の中がいっぱいになる。何も言えずに力いっぱい抱き締めた。ケインは腕の中でじっとしている。子供のか細い体が不憫だ。まだ稚(いとけな)いこんな子供を一人きりで見捨てるなんて、絶対にできない。子供の細い両腕を掴んで、エレーンは顔を振り仰いだ。「おばちゃんと逃げよう、ケイン!」
 ケインは呆気に取られて見下ろしている。焦れったい思いでケインを揺する。「街に出て、おばちゃんと暮らそう。ケイン一人くらい何とでもするから! ね!」
「……むりだよ、《 ロム 》がおってる」
 困ったように呟いて、はっ、と慌てて見返した。「あ、ぼくは、だいじょうぶだよ。キャンプにちゃんと、もどったから」
 番狂わせに虚を突かれ、腑に落ちない思いで見返した。「……本当に?」
 確かにケインは小奇麗な成りをしていた。お腹も減っていないようだし、衰弱していた昨日より、大分元気になってもいる。けれど、例えそれが本当のことでも、事件が遠隔地まで伝わっていないだけで、キャンプに連絡がいったが最後、身柄を引き渡されてしまうではないか──。ケインは見越したように首を振った。
「だいじょうぶなんだ。《 マヌーシュ 》 は 《 ロム 》 にきょうりょくしない。だから、ぼくのことも、かくまってくれる。だから、ぼくのことは、だいじょうぶなんだ。ぜったい、ぼくは、つかまらないよ。やりたいことも、いっぱいあるし」
 思わぬ力強い言葉に気圧された。懸命に言い募るケインの顔に面食らいつつ、話を合わせて笑みを作った。「そ、そう。ケインはどんなことしたいの?」
 ぼくね、と瞳を輝かせ、ケインは無邪気に一生懸命説明した。「あのね、こないだ、いじめた、ダイのこともやっつけてやりたいし、かあさんにもあいたいし、あとね、それとね、ぼくは──」
 目先の希望を指折り数え、ふと、そこで言いよどんだ。口をつぐんで唇を噛み締め、何かを堪えるように足元を見ている。急にどうしたのだ、と訝しんでいると、ケインははにかんだように微笑んで、緑梢に顔を振り上げた。
「……ぼくは、タイチョーと、うまにのりたかった」
 樹海の穏やかな風に吹かれて、素直な髪がさらさら揺れた。静寂が立ち込める木立を仰いで、ケインは眩しそうに目を細めている。それでもこの子は、ケネルを一途に慕っている──。
 かけるべき言葉を失った。今となっては叶わぬ夢だ。なんと酷な仕打ちをするのだろうケネルは──。びくり、とケインの肩が震えた。
「──だれか、くる」
 慌てた様子で木立をきょろきょろ見回している。つられて周囲を見回すも、樹海は穏やかに静まり返り、何の気配も感じ取れない。クルリ、とケインが身を翻した。
「またね、おばちゃん。もういくよ!」
 あたふた振り向きざまに手を振って、体を揺らして駆けていく。見る間に茂みに飛び込んだ。
 がさがさ揺れる藪を見送り、エレーンは、ほっと息をついた。ケインから聞いた現況によれば、最悪の事態は回避できたようだった。キャンプで匿ってくれるのならば、何とか追撃をやり過ごせる。元よりケインはどこへなりとも自在に行けるし、誰より強い力を持ってもいる。にしても、いつも親切な羊飼いの人達が、実はケネル達と不仲とは──。
 ふと、そこに気がついた。ケネルやファレスももしかして、彼らの密かな反発に薄々気づいていたのでは。いや、他ならぬ自分達の事であるのなら、むしろ知らぬ筈がない。事件がこうして明るみに出ては、立場上、放置は出来ないだろう。だから、指示を出しもした。だが、一連の対応の一方で、そうした事情とあの特殊な能力から、ケインが逃げ果せる可能性を密かに織り込んでいたのだとしたら──。そう思えば、揃いも揃ってさほど深刻な顔をしていなかった事にも納得がいく。確かにそれは勝手に組み上げた憶測だった。けれど、小さな希望をそこに見出し、心が幾分軽くなった。
 昨日から続いた緊張が解けて、脱力しつつも風道に向かう。それなら、ひとまず大丈夫──。そういやケインは「誰か来る」とか言っていた。もっとも、こんな樹海に踏み込んで来るのは、どうせファレスくらいのものだろうが。
 眦(まなじり)吊り上げガミガミ怒鳴る野良猫の顔を思い出し、( ああ、また文句言われる…… )と内心少々辟易しつつも、こちらに向かっているらしき人影の方に目を向けた。ガサガサ徐々に近付いて来る。どうやら複数いるようだ。なら珍しくケネルも一緒とか? ウォードと連れ立つとは思えないし──。
 ぶらぶらそちらに歩く内、相手が藪を割って顔を出した。その正体を何気なく認めて、歩み寄りかけた足がギクリと止まる。
( ……うそ )
 エレーンは愕然と立ち尽くした。ニヤニヤ笑う五人の賊がそこにいた。
 
 
 
 
 

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