interval〜粛清〜

 
 
 三十名以上もいるだろうか。
 席についた一同は、渋い顔で黙りこみ、一人として口をひらかない。
 燭台の炎がゆれる中、会議の卓を囲んでいるのは、青い軍服の面々だった。いずれの胸にも階級章と勲章が光り、腰には刀剣を佩いている。
 暗がりに沈む夜更けの部屋に、靴音が硬く響いていた。
 男が一人、後ろ手にして、一同の席の後ろを歩いている。席についた一同を、男は詰問しているようだ。罵るでもなければ声を荒げるでもない、その粛然とした口調から、男の方が彼らより、身分が上であろうことが知れる。もっとも、従者の姿は見えない。今、男は意外にも、一人きりであるようだ。
 叱責を受けた一同は、飴色の卓を睨んで、いずれも難しい顔つきだ。だが、双眸は一様に険しく、うち萎れた様子はない。
 影を黒くうごめかせ、壁掛けの炎がゆらめいた。
 カーテンのない一面の窓から、ノアニールの静かな月が、板床に白々と射している。
「……これは明白な背信行為だ。君たちには失望した。少々買い被っていたようだ」
 粛々と罪状を積みあげて、男は窓辺で立ち止まる。
 肩越しに、一同を振り向いた。蒼く冴えた月あかりの中、薄い唇が冷たく告げる。
「諸君。連帯責任だ」
 すばやく一同が目配せした。
 卓の下の密かやなその手は、すでに刀剣にかかっている。
 剣呑に騒がしく椅子が鳴り、一同が一斉に席を立った。
 
 
 

( 前頁 / TOP / 次頁 ) web拍手


オリジナル小説サイト 《 極楽鳥の夢 》