■ CROSS ROAD ディール急襲 第3部 1章1話17
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思わずのけぞり、転がった。
硬い石床に叩きつけられ、肘をしたたかにすりむいた。とっさについた手の平が熱い。急にコリンが暴れ出し、肩といわず顔といわず、がむしゃらに手を突っ張ってきたのだ。
顔をしかめて首を振り、ダドリーは転げた肩を引き起こす。
はっとして顔をあげた。懐に、重みも体温もない。コリンは
──どこだ。
夏日を浴びた回廊の向かいで、軍服が動きを止めていた。
いや、足に何かがしがみついている。それは見間違えようもない子供の頭。軍服の膝に顔を押しつけ、足元でうずくまっている。
素直な髪の後頭部が、軍服を見あげ、しゃくりあげた。
「やっ、やめて。やめてよ……恐いよ……恐いよぅ」
愕然と、ダドリーは目をみはった。なぜ、もっと、コリンに注意を払わなかった。あれほどひどく怯えていたのに。一刻も早く館外に出たくて、腕から飛び出してしまうほど。追われることに耐えきれず失禁してしまうほど。
「コリ──!」
身じろいだ途端、痛みが走った。
頬をつたう生温かい雫。切っ先が掠っていたらしい。ゆっくりめぐらせた軍服の視線が、足元で泣きじゃくる子供を捉える。
「も、戻れ! コリンっ!」
目をみはって、手を伸ばした。今、コリンがいる場所は、考え得るかぎり最悪の場所だ。軍服襲撃の目的は、他の誰でもないコリンの確保。
「コリン──コリン! 早く、こっちに!」
よろける足で、膝を立てる。軍服に向かい、踏み出して、だが、ダドリーは呆然と動きを止めた。
白い回廊の石床に、コリンがうつ伏せに転がっている。たった今、目にした動作の、意図がまるで分からない。
今、あの軍服は、自分の足にすがった子供を、首を動かして見おろした。そして、無下に蹴り飛ばした──。
あぜん、と思わず立ち尽くした目の前、軍服の肩が向き直る。
剣が、改めて持ちあがる。
あわててダドリーは身をよじった。
振られた刃を、左に避ける。ひゅん、と鋭く風を切り、白刃がきわどく腕を掠る。黒革の軍靴が近づいた。制帽の下の唇が、笑みの形に歪んでいる。背後で転がる子供のことなど、もう眼中にもないようだ。
振り下ろされる切っ先をかわし、右に、左に、ダドリーは避けた。軍服はたるそうな足どりで、ぶらぶらと近づいてくる。刃の軌道はでたらめだ。石床の上を転げまわる獲物を、殊更にいたぶって楽しむように。
夏のまぶしい陽光を睨んで、ダドリーは肩で息をついた。呼吸が熱い。目がくらむ。激しくゆれ動く回廊が、真夏の日ざしで白んでいる。
とん、と軍靴が、ついに軽やかに石床を蹴った。
(……殺られる!)
きつくつぶった瞼の裏で、真夏の日ざしが一瞬かげる。
剣戟の響きが、遠く聞こえた。ヒースとカーシュは持ちこたえているらしい。汗が顎先から、したたり落ちる──。
怪訝にダドリーは目をあけた。
ぽつん、と汗が、石床に黒い。
自分が吐き出す呼吸だけが、熱く、浅く、乱れていた。うるさいほどに打ち付ける鼓動で、現状をうまく把握できない。まだ、たぶん斬られてはいまい。喉の渇きが耐えがたい。どこへ行った、
──軍服は。
視線をめぐらせ、ぎくりと肩が居竦んだ。
彼方までつづく白んだ回廊。その中で、そこだけ異質な鮮やかな青。回廊の外側の石壁だ。そう、この街壁の
──狭間にいる。
街にめぐらせた外壁の狭間で、軍服が蔑むようにながめていた。
日ざしを背負った姿を仰ぎ、ダドリーは唇をわななかせる。
汗だくの体が無意識に動き、熱い石床に手をついた。よろめきながら立ちあがる。軍の青い制帽の下、唇が薄く笑っている。つるりと薄い唇が、秘め事を紡ぐように囁いた。
「お、し、ま、い、だ」
軍服の手が、もちあがる。
鋭い刃が陽光を弾いた。これまでの戯れとは明らかに異なる身ごなしで、慎重に狙いを定めている。公言通り、次に繰り出す一撃で、最後にするつもりらしい。
踊るような優雅さで、とん、と軍靴が狭間を蹴った。
ダドリーはきつく目をつぶる。がんじがらめに全身が強ばる。
ギャ──と鋭い叫びが聞こえた。
樹海の高みで激しく羽ばたく、大きな鳥の威嚇のような。
どくんどくん、と鼓動だけが、首をすくめた耳元で響いた。
微風が、ぬるく頬をなでる。剣戟が知らぬ間に途絶えていた。硬直した肩をぎくしゃく動かし、ダドリーは怪訝に顔をあげる。
刃を高く振りあげたまま、軍服が動きを止めていた。
その肩がぐらりと傾いで、そのまま仰向けに、空にのけぞる。
「……な!?」
とっさにダドリーは駆け寄った。
焼けた石壁に手をついて、街壁の外に身を乗り出す。
それは一瞬──ほんの一瞬のことだった。
狭間についた手の平の下で、細かな砂が、ざらりとこすれる。ザン、と大きなさざめきを立て、軍服が頭から野草に突っこむ。
旺盛に茂った野草の端から、黒革の軍靴が覗いていた。今やぴくりとも動かぬそれを、ダドリーは浅い呼吸で凝視する。
「……なんだ、今のは」
「おい! 無事か!」
遠い怒鳴り声に、我に返った。
夏日を浴びた回廊の先から、あの二人が駆けてくる。目を見開いた赤い蓬髪、顔を強ばらせためがねの軍服──。
仲間の姿を見た途端、萎えた膝がついに砕けた。
へなへなその場にへたりこみ、壁に頭をもたせかける。息を長く吐き出して速い鼓動をなだめつつ、立てた膝にうなだれる。指先が、膝が、止めようもなく震えている。
足音と気配が、風圧をまとって飛びこんだ。
「無事か! 癖っ毛!」
手荒く、両肩をつかまれる。
ぐったり膝に突っ伏したまま、ダドリーはようやく唾を呑んだ。「ん、たぶん。──俺、まだ生きてるし」
「お前、顔から血ィ垂れてるぞ。腕も派手にやられたな」
「……あ、……ほんとだ」
気づけば、腕が傷だらけだ。
カーシュが顔をしかめた。「──お前、ひでえ面だぞ」
無頓着なカーシュが、わざわざそれを指摘するくらいだ、さぞ、ひどい有り様なのだろう。確かに、牢からすぐさま、あの領邸へ急行したから、ひげも髪も伸び放題。石床を転げまわって衣服はずたずた、手足はすりむき、頬から血がしたたっている。
「俺のことより、コリンの方を──」
言いかけ、ふと口を閉じる。コリンに駆け寄ったヒースが見えた。ならば、あっちは問題ない。立てた膝に手を置いて、ダドリーは震えをこらえて立ちあがる。
膝が立たずに、よろめいた。手を突きかけたその腕を、カーシュの手が引っつかむ。
「──おう。立てるか?」
覗きこむカーシュの顔を見た。
「狙われたの、俺っぽい」
カーシュは軽く嘆息した。
「みたいだな。──まったく迂闊だった。また三人目が出るとはな。しかも、今度の刺客は、前とは段違いの腕とくる。ありゃ、そこらの兵隊どころじゃねえ。こうまでしつこく寄越すなんざ、お前、そうとう恨みを買ってんな」
「そう言わなかった?」
「癖っ毛」
諌める口調でカーシュは遮り、渋い顔で見返した。
「こんなこたァ言いたかねえが、あんな腕の立つ連中に狙われてんじゃ、お前、長くはねえかもしれねえぞ」
「わかってる。ていうか」
ダドリーは言い淀み、眉をひそめて口を開いた。
「──今度こそ、だめかと思った」
今になって、身震いがきた。
あの、制帽の下で笑った唇──。
「あ、いや。俺のことはともかくさ」
気を取り直して顔をあげた。
「みんな無事で、よかったよ。にしても、カーシュたちは、さすがの腕だな。あんな凄いのを討ち破るなんて」
「いや、逃げた。向こうが勝手に」
彼らが元いた円塔付近を、カーシュは戸惑い顔で振りかえる。
「連中、急にあわてた様子で、塔の階段に飛びこみやがった。不利でも何でもなかったのによ。なのに、急に妙なこと、ほざいた途端」
「妙なこと?」
「さっき、鳥が絞められたような声がしたろ。あの直後だ、連中が驚いて逃げたのは。だが、その言葉ってのが、どうにも奇妙で──」
カーシュはためらい、うかがうように目をすがめた。
「" サキモリだ " 」
ぽかんと、ダドリーは口をあけた。
「──なにそれ。サキモリ? どういう意味?」
さあな、とカーシュは肩をすくめる。
顔をしかめて身じろいで、昼の回廊を見まわした。「それはそうと、こっちに出た三人目はどうした。まさか、お前が倒した、とか、ふざけたこと抜かしやがるんじゃねえだろうな」
「まっさか。丸腰だぜ俺。つか、武器があっても無理だって、あんなの」
突っ立ったまま泣きじゃくるコリンを、ヒースが膝をついて、なだめている。その姿を、ダドリーは目を細めてながめやった。
「……俺は、何もできなかったよ。ごろごろ転げて、這いつくばって逃げてただけ。コリンを守ってやるどころか、自分が逃げるので手一杯で。──たく、無様だな。情けないったら、ありゃしない」
「なら、どこ行ったんだ? 軍服は」
ふと、ダドリーは眉をひそめる。「──矢で、射られた」
「矢だ? 誰が。どこから」
カーシュは面食らった顔をして、静かな回廊をぐるりと見まわす。「俺もめがねも、弓なんぞ、どこにも隠しちゃいねえぞ」
「いや、一瞬だったが、確かに見た。矢が、あいつの顎の下に突き立ってた。それで、狭間に立ってた軍服が、仰向けに外へ落ちたんだ」
「矢が刺さったのが喉だってんなら、射手はその逆、さしずめ、その下の通り、ってところか」
カーシュは首をかしげつつ、回廊の街側の手すりへと歩く。「だが、下からこっちを狙うとなれば、壁から相当離れねえと無理だぜ? それでも的を射止めたってんなら、途方もねえ腕前だ。しかも、ただの一発で。──て、一体どんな化け物だよ」
眼下に広がるトラビアの街を、カーシュはしげしげと覗いている。
赤い蓬髪の背中から、ダドリーはそっと目をそらした。
「──けど、確かに見たんだ」
今も、目に焼きついている。あの信じがたい光景が。
軍服が地上に落下する直前、奇妙なものを目撃していた。
狭間で硬直した軍服の喉に、矢が一本突き立っていた。そして、体が投げ出され、街壁の向こうに墜落した。落下の風圧で制帽が飛び、頭髪が宙に舞い広がった。腰の辺りまであろうかというほどの、意外にも長い直毛だった。それがすべて制帽の中に収まっていたというのだから驚きだ。いや、奇妙なのは長さではない。
「──青い、髪」
呟き、ダドリーは眉をひそめる。
「……まさか、な」
息を吐いて、首を振った。青など、人の頭髪の色ではない。たぶん、強い日ざしにさらされて、目が変になっていたのだろう。確認している暇などなかった。ほんの一瞬──そう、宙に浮いた軍服が地上の野草に落ちるまでの、わずか一瞬の出来事だった。
おい! とカーシュが注意を引いた。
「まずいぞ。壁の外を見ろ」
顎でさしたのは、狭間の向こう。ダドリーは怪訝に振りかえる。
ぎくりと肩をこわばらせた。
「──もう、きたか」
「急ぐぞ!」
目配せしたカーシュに続き、回廊の先へと駆け出した。
こちらを窺っていたのだろう、ヒースも速やかにコリンをかかえる。ダドリーは奥歯を噛みしめた。予想以上に進展が速い。
緑にかがやく平原の中、楼門に続く街道に、きらびやかな馬車の一団が見えた。
黒い馬車のかたわらを、軍服の数人が固めている。息せき切って、楼門に飛びこむ。
「跳ね橋をあげろ!」
古く重厚な門の内、哨務に就いていた門衛たちが、面食らって目配せした。「……は?」
「だから閉鎖しろって言ってんの! ほら、急いで!」
「──あんた、手当てした方が、いいんじゃないの? そんな血だらけで、いきなり何を。そもそも、どんな権限で」
「ご領主さまの命令だよ」
子供をかかえた軍服の眼鏡が、一足遅れて駆け込んだ。
門衛が振り向き、ぎょっ、と固まる。「──ふ、副官!?」
「訳あって山賊のように薄汚れちゃいるが、この人は当主から、防衛を一任されている」
「し、しかし、馬車が、すでにそこまで」
「いいから従え」
大勢のあわただしい靴音が聞こえた。
石畳の街路を駆けてくるのは、薄い灰色の制服の一団。国境守備隊の面々だ。
カーシュは門の外まで歩き、街道の先に目を凝らす。
「おい、早くしろ。馬車がくるぞ」
強面でせっつかれた門衛は、ヒースの顔をおろおろ窺う。「あ、あの〜。しかし、それはちょっと……」
ダドリーも苛々と振りかえる。「もうっ! 早くしろよっ!」
「──いえ、ですが」
たじろいだ様子の門衛が、上目使いで、ちらと見た。
「あの、それは、どのようにすれば……」
「──あんたら門番じゃないのかよ!?」
古めかしい門の中、なすすべもなく一同おろつく。「で、では、今すぐ、事務所から手引書を──」
「そんな暇あるわけないだろっ! どうにかしろよ、門番だろう!」
門の奥で門衛たちは、三つの頭を寄せ合って、何やらごそごそやっている。
「なあ、おい。このデカイのがそうなんじゃないか?」「ああ、たぶん」「おい、本当にこれかよ。びくともしないぞ」「案外それっぽい飾りなんじゃないのか?」
着々と近づく馬車を見やって、ダドリーは焦れて振りかえる。「なにやってんだよ! 早くしろってばっ!」
「「「やってますっ!」」」
悲鳴まじりで門衛は返す。真っ赤な顔でふんばりながら、日時計のような錆びたテコに、三人がかりで取りついている。
緑にかがやく広大な大地が、うららかに夏日を浴びていた。
ゆるやかに白い街道に、ぬるいそよ風が吹きわたる。
がらがら車輪を響かせて、馬車が徐々に近づいてくる。脇を固める軍服たちの、確かな足取りに揺るぎはない。
着実に近づく街道の馬車を、ダドリーはやきもき凝視する。予期せぬ事態が発生していた。古い楼門の閉じ方など、今や誰も知らないのだ。古い設備。堅固な楼門。時は刻々と過ぎていく。カーシュが肩越しに振り向いた。
「くるぞ!」
夏日かがやく街道に、ザッと一行が並び立った。
楼門へ続く橋のたもとに、十余名の兵に守られて、黒塗りの馬車が停まっている。
ガタン、と馬車の扉がひらいて、初老の男が降り立った。黒の礼装、白いひげ。夏日に映える赤い羽根の帽子飾り。黄金の旗を、従者が掲げた。その記章は
《 天駆ける馬 》
部下を引き連れ、ヒースが出向いた。
到着した一行の前に、ずらりと列をなして立ちはだかる。
門の袖から様子を窺い、ダドリーはやきもき、門衛たちを振りかえる。(──おい! まだかよっ!)
(──やってますっ!?)
(こうなったら、先に格子落として、門を封鎖──)
「貸しな」
声が、した。
「あーあー。見ちゃいられねえよ」
初めて聞く張りのある声。若い男だ。
門衛たちの肩の向こうに、薄茶の髪がかがみこんだ。
「しょうがねえな。はい、どいて。──そっちじゃないって、こっちの鎖だ。錘がそこにあるだろう? まずは、こいつを解除しなけりゃ──ああ、中入る人は、早いとこ入って。──よし、これでオッケー──ギル、いいよ〜。格子落として」
腹立たしげな使者一行を、守備隊が腕づくで押し戻した。
守備隊とヒース、そしてカーシュが、門の中へと直ちに駆けこむ。
門の奥の暗がりで、ひらりと銀光が一閃した。
ダーン──と重い衝突音。
守備隊に追いすがった一行が、橋の上まで飛びのいた。
辛くも下敷きを免れて、蒼白な顔でざわめいている。もうもうと土煙が立ちこめていた。困惑した一行の前には、街と外とを分断する、分厚く重い落とし格子。楼門の暗い天井で、ギギ──と滑車が軋みをあげる。
不気味な地響きが、どこからか聞こえた。
地の底から轟くような、得体の知れぬ摩擦音。街道にかかった跳ね橋の境が、地面を離れて、もちあがる。
かがんだ門衛の肩の上から、ぴら、と手がなおざりに振られた。
「はい。橋にいる人たち、早くどかないと危ないよ?」
橋で怒鳴っていた一行が、はたと気づいて、わたわた後退。
長い歳月を経る内に、たくましくはびこった緑の野草が、めりめり音を立てて引き剥がされた。
土砂がぱらぱら、橋から落ちる。門衛たちが目をみはる前で、重く分厚い橋桁が、軋みをあげて持ちあがる。
ドーン、と打ち付ける音がして、視界が暗く閉ざされた。
「……間に、あった」
ほっとダドリーは息をつき、腕を持ちあげ、額をぬぐった。
一同へなへな、暗い路面にへたり込む中、城壁内の分厚い鉄扉を、数人がかりで守備兵が閉じる。
「こういう設備は有効に使えよ、もったいない」
今しがた聞いた"若い声"。今回の功労者であるらしい。
脱力しながら、ダドリーは尋ねる。「あんたのお陰で助かった。どこの所属?」
「 Nice to meet you 」
え──と面食らって振り向いた。
聞いたこともない風変わりな言葉だ。ヒースを始めとする一同も、あぜんと顔を見あわせる。
陽の遮られた門の中、旅装の二人連れが立っていた。
淡い金茶の巻き毛の青年、そして、つややかで長い、黒髪の青年。どちらも、すっきりと整った容姿で、白磁のようななめらかな頬と、落ち着き払った澄んだ双眸。今の言葉のみならず、旅装の外套も見慣れない──。
はっとダドリーは息を呑んだ。
これまでずっと心の隅に押しやっていた、気がかりな可能性を思い出す。
──国境の橋が、あがっていない。
異国の風貌が、そこにいた。
明らかに自国の民ではない。単なる貿易商人でもない。有事の際の心得が、この彼らにはあるのだから。「篭城の際の手はず」など、誰でも持ち得る知識ではない。それは戦闘を体験した者だけが──
ほっと気がゆるんだのも束の間、新たな緊張が楼門に走った。
「……なんて、こった」
異国の風貌の二人を見据えて、ダドリーは密かにほぞを噛む。他領の排斥に追われていたら、他国の兵に
──侵入された。
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