翠光が、まばゆく迸った。
それが羽ばたき、たち現れる。
輪郭だけの光彩が、木漏れ日の中にたたずんでいた。
白い装束の袖が舞い、風もないのに髪がゆらめく。
「久しぶりー。月読」
あぐらで夏草に座したまま、ウォードはそれに微笑んだ。
夏草に埋もれた膝先には、今まさに背を斬られ、息もたえだえの黒い髪。
淡い緑のゆらぎの中、それの桜色の唇は、うっすら微笑をたたえている。
「それで、あんたは、どの月読―?」
彼女の白い装束が、あるかなきかの風になびく。
大気にゆらめく光彩は、少し首をかしげたろうか。
「オレ、頼みがあるんだけどー」
沼が緑をきらめかせ、時おり小さく波紋を作った。
夏日が静かに射していた。
木々はのびやかに枝葉を伸ばし、夏空は青く澄んでいる。
風が往き、雲が流れた。
ウォードの頬に、涙が伝う。
桜色の唇がひらいた。
《 時は来たれり 》
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