CROSS ROAD ディール急襲 第3部3章2
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 少ししてから、気がついた。
 ひそひそ暗い響きのざわめき。
 誰かの肩にかつがれて、多くの人が散ったホールを、通り抜けたようだった。
 なんだろう。何かあったのだろうか。重苦しいざわめきの中に、同じ言葉が入り混じる。……誰か、"暗殺"されたのだろうか。
 それからまた意識が途切れ、しばらく経って気づいた時には、灯りのない部屋にいた。
 ひんやり静かな暗がりに沈む、家具のないすっきりした壁。応接室のような佇まい。どこだろう、ここは。なぜ、ここに連れてこられた──?
 ひらいた窓の、外は夜空だ。いつの間にか、日が暮れている。どこかの道を歩いていた時には、まだ夏日が射していたのに。
 ふと、それを見咎めた。
 てっきり無人と思っていたが、暗い窓辺に人がいる。
 窓枠にもたれた逆光の人影、窓の手すりに腰かけている。
 事情を聞こうと、精一杯身をよじった。呼びかけようと口をあける。けれど、声が出てこない。起きあがろうとしたけれど、なぜだか体が動かない。手足がまるで動かない。
 焦燥に駆られ、自分の全身に意識を凝らす。
 物音のない暗がりで、痛みは遅れてやってきた。手首が痛い。何か頑丈な硬いものに、両手を縛りつけられている……? 
 嫌な記憶がよみがえった。"監禁" の語が脳裏をかすめる。まさか──
 いや、海賊の一味は、もういない、そう誰かが言ったはず。けれど、それなら、この手足は──
 自分の置かれた状況に、遅まきながら気がついた。
 ざわり、と血の気が引くのがわかった。なぜ、ここに運ばれた? なぜ、手足を縛られている? まるで・・・捕らわれた・・・・・罪人のように・・・・・・。一体何が起きている──!?
 窓辺で、人影が振り向いた。
 面長の頬が、星明かりに白い。さらりと長い髪がゆれ、もたれた背中を引き起こす。
 じっと真顔で見つめている。無言で何かを探るように。
 意外な顔をそこに見て、鋭く息を呑みこんだ。
(……え? なに? どういうこと?)
 戸惑い、胸が不穏に高鳴る。まるで訳が分からない。けれど、他には人がいない。ならば、縛りつけたのは、やはり、あの彼──。
 そんなことが、あるわけなかった。
 そう、断じて、あるわけない。どうして彼が、こんなひどい仕打ちをするのだ。夢──いや、夢じゃない。あの長い頭髪と、あのきれいな顔立ちを、他の誰かと見間違えるはずがない。
 頭がひどく混乱した。
 肌を刺すような鋭い視線。にこりともしない厳しい眼差し。まるで敵を見るような。
 そう、なぜだろう、警戒の気配。
 冷ややかで剣呑な、拒絶の気配。いったい何があったの、
 ファレス──。
 
 
 

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