【ディール急襲】 第3部3章

interval 5 〜 契約 〜

 
 

 翠光が、まばゆくほとばしった。
 それ・・が羽ばたき、たち現れる。

 輪郭だけの光彩が、木漏れ日の中にたたずんでいた。
 白い装束の袖が舞い、風もないのに髪がゆらめく。

「久しぶりー。月読」
 あぐらで夏草に座したまま、ウォードはそれに微笑んだ。
 夏草に埋もれた膝先には、今まさに・・・・背を斬られ・・・・・、息も絶え絶えの黒い髪。
 淡い緑のゆらぎの中、それ・・の桜色の唇は、うっすら微笑をたたえている。

 カノ山近郊、西の森。
 青い梢がそよ風に揺れる。
 大気にゆらめく光彩が、少し首をかしげたろうか。
 彼女の白い装束が、あるか無きかの風にそよぐ。

「──あい分かった」
 うなずき、月読が眉をひそめた。
「だが、しかと約束はできかねる。いくら、国主の頼みとはいえ」
「……誰ー?」
「本当に覚えておらぬのか。己が・・何者であるのか・・・・・・・を。我らが何故なにゆえ、こうした旧知の仲なのか」
「オレが閉じ込められてた所に、あんたが入ってきたんでしょー?」
「侵入したのはお前の方よ。しかし、あの邂逅より前、我らは知己であったはず。お前は遥か開闢かいびゃく時、"貴馬の境域"と契約したはず」
 遥か昔の開闢時、時空が三つに分かたれて、三つの境域セカイが開かれた。
 境域に芽生えた生命は、それぞれ種の生き残りを賭け、様々な姿に分化した。「ヒト」も膨大な亜流の一。だが、親たる境域に成り代わり、群れを統べるというならば、しかと取り決めをせねばならぬ。
 よって、三つの境域は、地平を統べる 「ヒト」 の総代 「国主」 と契約を交わすべく、貴馬、天鳳、荒竜と霊獣をかたどり、顕現した。育んできた膨大な命を、ゆめ滅ぼすことのないように。
「しかし、お前も酔狂なことよの」
 つくづくというように、月読が呆れた一瞥をくれた。
「自ら枯骨になろうとは。 とがとは本来、過ちを犯した当人が、その身で償うものであろうに」
「いいよ。オレは、それでいい」
 膝の先で横たわる瀕死の彼女をウォードは見、梢の先の空をながめた。
「エレーンの罪は、オレがあがなう」
 
 
 

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