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あっちかな? こっちかな?
出口はどっち? くすくすくす……
まおくんは、森の中を歩いていました。
道を聞きたいのです。誰か、いないでしょうか?
すると、
大木の陰に、なにか、います。
自分の体をペロペロなめてる黄色いキツネ──?
そこにいたのは、《 身勝手コンコン 》 でした。
つやつやの尻尾を持っています。今は、お手入れの真っ最中。
まおくんは、わけを話しました。
「キツネさん、キツネさん、森の出口を教えてよ」
顔を上げた 《 身勝手コンコン 》 は、まおくんの顔を、チラッと見ました。
けれど、
「そんなことより、ねえ、見て見て?」
そういって、自分の話を始めてしまいます。自分の毛並みが、どんなに美しいか。どんなに素晴らしいか。
《 身勝手コンコン 》 は、自分をほめてもらうこと以外には、まったく関心がありません。森の仲間は、みんな、それを知っていましたから、もう誰も、話を聞いてはくれません。だから、なんにも知らないまおくんは、格好の話し相手です。
《 身勝手コンコン 》 は、いつだって、毛皮のお手入れをしています。だから、手入れの行き届いた黄色い尻尾は、ふっさふさのもっこもこ。
《 身勝手コンコン 》 は、努力家です。ざゆうのめいは、「 継続こそ力 」です。
でも、そういう姿は、みんなには、決して見せません。 「 何もしなくても、きれいなの
」と、みんなに自慢したいのです。
でも、本当は、みんな、それを知っています。
《 身勝手コンコン 》 は、ぺらぺらぺらぺらしゃべります。自分の毛並みが、どんなに美しいか。どんなに素晴らしいか。
自慢話は、いつまでたっても、止まりません。
お日様は、どんどん暮れていきます。
まおくんは、困ってしまいました。
「あの、キツネさん。ぼく、もう行くね」
すると、《 身勝手コンコン 》 は、くるり、と、自慢の尻尾を振り上げました。
「あ、そう!」
ぷい、と、そっぽを向いてしまいます。
自慢話を途中で止めさせられたのが、気に入らないのです。
《 身勝手コンコン 》 は、自分が世界のすべてですから、ほめてくれなかったり、けなしたりする奴は、問答無用で、悪いヤツです。だから、《 身勝手コンコン 》 が出会う相手は、たいてい、悪いヤツになってしまいます。
ほっそりした前足を、すっ、と持ち上げると、《 身勝手コンコン 》 は、まおくんがどんなに悪いヤツだったか、みんなに言いふらしに行きました。
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