ぐるぐるの森 

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「まてまてまてぃ!? 帰ってはいかーん!」
 突然、バサバサバサ──! と、あわただしい羽の音が聞こえてきました。
 一人と一匹が 「 なんだなんだ? 」 と、そっちの方を見てみれば、あわてて飛んで来るらしい、ひとつの小さな黒い影……?
 
 あの《 ものしりフクロウ 》では、ありませんか。
 
 《 ものしりフクロウ 》は、翼を広げて滑空してから、すいっ、と、元の枝にとまりました。
 短い首をうなだれて、ぜえぜえぜえぜえ言っています。急いで戻って来たようです。
 急に暗くなった森を見回し、まおくんは、文句を言いました。
「クマさんは、出口なんて知らないって言ってますよ?」
 《 オレがやるクマどん 》も、ぶっとい腕を、ゆっくり組みます。
「" オレにやれることがある " って、あんたが言うから、来たんだぜ?」
 《 オレがやるクマどん 》も、おおいに不満です。せっかく来たのに、" やれること " がないからです。
「双方、待てい! だから、待てと言うておろうに!」
 茶色の羽を、ばさり、と、広げて、《 ものしりフクロウ 》は、一人と一匹の文句をさえぎりました。
 けれど、まおくんは、ちょっぴり怒っているのです。
「もお! フクロウさんってば、ずいぶん、遅かったじゃないですかあ」
 これでは、すぐに日が暮れて、アニメが始ってしまいます。「 待っておれ 」 と言ったから、こうして、ちゃあんと約束を守って、ずうっと、ずうっと、待っていたのに。
「──ああ、いや、それがのお」
 《 ものしりフクロウ 》が、まおくんを見ました。
「急に、方向が分からんようになってしもうてのぉ。長らく、この森に住んでおるが、こんなことは、初めてじゃよ」
 不思議そうに、短い首を傾げます。けれど、すぐに、賢そうな真ん丸の目を、きょろり、と素早く動かしました。
「それは、ともかく、まあ、見ておれ。ワシに、良い考えがあるんじゃ」
 歌うようにそう言うと、《 ものしりフクロウ 》は、ふぉっふぉっふぉっと、目を細めて笑いました。自信たっぷりです。
 けれど、《 オレがやるクマどん 》は、出口なんて知らないのです。本人が言うんだから、間違いありません。
 まおくんと《 オレがやるクマどん 》は、お互いの顔を見合わせました。
 いったい、どうするつもりでしょう?

 
 
 
 
 
 
 
 

 
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