ぐるぐるの森 

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 《 ものしりフクロウ 》が「ついて来い」と、自信満々で翼を振るので、一人と一匹は、よく分からないながらも、従います。
 枝から飛び立った《 ものしりフクロウ 》は、茶色の翼を大きく広げて、すい、と風の上を滑っていきます。
 けれど、一人と一匹は、空なんて、ぜんぜん飛べません。
 だから、あわてて走って、追いかけました。
 
 しばらく、そうして走っていると、《 ものしりフクロウ 》は、ばさばさ翼を羽ばたかせ、とある場所に、スイ、と、優雅に舞い降りました。
 そこは、元いた木から数えて、20本も先にある、モミジの巨木の下でした。
 根元の方に生えている、青々とした大きな葉っぱに、なにか丸いものがいるようです。
「……これは、なに?」
 はあはあ、息をあえがせて、まおくんは、《 ものしりフクロウ 》に聞きました。ちなみに、一緒に走ってきた《 オレがやるクマどん 》は、ケロッとした顔で見ています。
 うぉっほんっ! と、一つ咳払いをして、《 ものしりフクロウ 》は、物々しく答えました。
「これは、《 まきまきマイマイ 》じゃよ」
 まおくんは、首を傾げて、見上げました。
「雨の季節に、アジサイの葉っぱの上なんかにいる、あのカタツムリさんのこと?」
 それにしては、ちょっと大きいです。まおくんの頭くらいは、ありますから。
 けれど、《 ものしりフクロウ 》は、うむ、と、物々しく、うなずきました。
「こやつらは、里への道に詳しいからの。雨が降ったら、里へ遊びに行くのが、奴らの慣わしであり、礼儀でもある。訪ねて行くと、人も喜ぶ」
「そうなんですか?」
「うむ。まったく律儀な連中よ」
 そう言って、《 ものしりフクロウ 》は、黄色いくちばしで、《 まきまきマイマイ》の茶色で書かれた渦巻きを、ツンツン軽くつっつきました。
 やがて、
「……なんか用?」
 かたく閉ざしたカラの中から、《 まきまきマイマイ 》が、にゅーっと、迷惑そうに首を出しました。
「硬いくちばしで、つっつかないでよ、ぼくのお家が壊れちゃうじゃないかあ」
 大切なお家をつつかれて、とても、とても、嫌そうな顔。
 《 まきまきマイマイ 》は、お家が大好き。だから、いつでも、どこでも、お家を背負って移動します。ちなみに、ざゆうのめいは、「 難攻不落 」です。
 大好きなお家で寛いでいるところを呼び出されたので、《 まきまきマイマイ 》は、ちょっぴり不機嫌。
「オヌシに、頼みがあるんじゃが、」
 物々しくそう言うと、《 ものしりフクロウ 》は、茶色の翼をバサバサ動かし、かくかくしかじか、と説明しました。
 《 まきまきマイマイ 》は、まおくんの困った顔を、しばらく、じぃっと見ていましたが、やがて、「 そのまま固まっちゃったんじゃないかしら……? 」 と、みんなが心配になった頃、ぬめぬめした首を、にゅーっと、ゆっくり、動かしました。
「……あっちだよ」
 左の道を示します。
 枯葉が厚く積もったそこには、ヌメヌメ光る " 銀の道 " 。
 《 まきまきマイマイ 》が使っている、出口へと続く一本道です。
「なら、送って行くのは、オレがやる!」
 出番です。《 オレがやるクマどん 》は、黒くて分厚い毛皮の胸を、ぶっとい腕で、どん、と叩いて、ひょい、と、まおくんを、でっかい肩に乗せました。
 これで、やっと、まおくんも、自分のおうちに帰れそうです。
「ありがとう、みんな」
 ぺこりと背を折り、膝におでこをくっ付けて、まおくんは、お礼を言いました。

 
 
 
 
 
 
 
 

 
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