☆ CROSS ROAD 月読の記憶 02
【2】 襲 撃
立ち現れたあの男は、あの石を出すよう強要した。
赤い髪をした、黒い服の男だった。
小首をかしげて少しだけ笑い、口から煙を吐いている。
黒い眼鏡をかけていて、顔立ちは、よくわからない。
不遜な笑みを向けられて、ぞくりと背筋が凍りついた。
その理由は、わからない。
ゼルガディスは男を追い払おうとした。
だが、男は取り合わない。ひょろ長いその脚で、ストーブを躊躇なく蹴り飛ばした。
小屋の壁に、火がついた。
木造りの粗末な小屋は、たちどころに燃えあがる。
村が、すべてが、真っ赤に燃えた。
「あんたは、お宝を選んだんだろう?」
身を隠した暗がりで、赤髪の嘲笑がよみがえった。
赤髪に挑んだ村人が、冷たい地面に転がっていく。一人、二人、三人、四人──
無慈悲な凄惨さに、身が凍った。
だが、あれを奪われるわけにはいかない。
一心不乱に森を駆け、祠の扉を開け放った。
「案内、ご苦労」
背中で、あの声がした。
知らぬ間に、赤髪がそこにいた。
赤髪はあっさり石を奪い、森の小道に踵を返す。
とっさに足にとりすがり、返して欲しいと懇願した。
赤髪の男が振りかえる。
「……だから、危ねえって言ったろう?」
どこかで聞いた声だと思った。
世界が閉じゆくその刹那、火の粉が舞い散る森を見た。
( 『 邂逅 〜始まりの地〜 』 より )
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