【 番外編2 INDEX 181210 】
エレーンのるんるん滞在記
【その3】
「……君は」
こちらの顔を見るなり彼は、はっとしたように立ちつくした。
ケネルと二人、思考がぶっ飛び、へたり込んでいた店内に、
ぶらりと外から戻ってきたのは、トーノという名の青年だった。
聞けばケネルが、たいそうお世話になったとか。
本職は学生なんだけど、ひょんなご縁でお知り合いになったとかって──
て 「本職」ってなに。
銀縁メガネの知的そうなトーノは、子供っぽいながらも利発そうな顔立ちの学生だ。
つまりは未成人であるはずで、
まだ張りのある新しい服で間違っても貧乏には見えないのだけれど、
夜には酒も出すこの店で、なんでか働いているらしい。なんで?
ちなみに、店のマスターに、トーノが頼みこんでくれたお陰で、
ケネルと二人、店の二階に居候させてもらえることになった。
なんでもトーノ言うところの 「ばいと」 ──要は、お店を手伝うことが条件だ。
というのも、こっちの飲食業界は、近年、人手不足なんだとか。
右も左もわからない知らないセカイに引っ張り込まれて、
(ついに、まじで 野垂れ死にかマジで……!?)
と粗忽なタヌキを睨んだが、
なんということ。
捨てる神あれば、拾う神あり。
これで一番の心配事 ご 飯 の心配はなくなった──!
万歳三唱! なあんてラッキー!
やー、もう! トーノさまさまぁ〜!
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