CROSS ROAD ディール急襲 第2部 3章 7話10
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「……なんで、コイツがここにいるんだ?」
 翌早朝、じーん、と痺れた左の肩を擦りつつ、ケネルは首を捻っていた。脇には何故か、手足を縮めた熟睡中の件のゲスト。事ここに至った経緯については、さっぱり記憶にないケネルである。
 向こうの寝床に戻すべく、片手で掛け布を無造作に剥いだ。途端、朝の冷気がぬくい体に降りかかり、懐の彼女が、くしゃん、とくしゃみ、ぶるっと震えてしがみ付く。
 ケネルは瞬いて見下ろした。掛け布をもそもそ肩まで戻す。迷惑そうに眉をしかめて、彼女はますますしがみ付いてくる。最適な顔位置を微調整し、温かい布団でヌクヌク寛いでいる様子。ケネルは無言で固まった。しかし自分だけでも起きようと、肩まで布団を被ったままで体を引き離そうとごそごそする。だが、しっかと張り付いた彼女は取れない。
 ケネルは天井を仰いで溜息をついた。布団の中から腕を出し、頭の下から枕を取って、熟睡中の頭の下に差し入れる。体にしがみ付く手を離し、身代わりの枕にゆっくり移す。己の体をそっと引き抜き、四つん這いでこそこそ脱出、北側の寝床に足を向けた。
 未使用の布団を隅に畳んで、寝床に戻る。掛け布の傍らにしゃがみ込んだ。天窓から降り降る朝陽の中で、安らいだ寝顔が枕にしがみついている。
「──あんたは寒がりだったな」
 アレを確かめようとして、くしゃみで抗議されたいつぞやの朝、大量のシュラフに埋もれていたあの晩。冷えた寝床にわざわざ移すこともない。
 朝の透明な光の中で、ケネルは微笑んで手を伸ばした。
 
 
 
 
 

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