トモダチ 〜 さきちゃんと ぼく 〜 ( 3 / 5 ページ )
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昼には、いつも、少しだけ、鼻を外に出して、見張ってる。
怪しい奴がいないか、誰か帰ってこないか。
ぼくの仕事だ。
ぐったりのびて、夏を越し、
さんまのおいしい秋を越し、
みんなの足を掻き分けて、コタツに潜り込む冬を越し、
そして、さきちゃんは、中学生になった。
" ぶかつ " が忙しくなって、 " がっこう " から、中々戻って来られない。
だから、最近では、お散歩は、だいたい、ママと行く。
本当は、さきちゃんと行く方が、好きなんだけどな、ぼく。
でも、じっと我慢。
さきちゃんは、忙しいのだ。
それに、ぼく達は " トモダチ " なのだ。だから、分かってあげないと。
今だって、さきちゃんは、お出迎えに行けば、苦しいほど抱きしめてくれるし、学校がお休みの時には、一日中だって遊んでくれるし、お散歩にだって、一緒に行く。
そういう時には、自慢の尻尾をぶんぶん振って、歩くんだ。
柔らかい草を蹴って、フリスビーで遊ぶ。
さきちゃんが笑う。ぼくの頭を、優しく撫でる。
さきちゃんが笑っていれば、ぼくは、幸せ。
さきちゃんは、とっても、かわいい女の子になった。
ぼくの自慢のさきちゃんなのだ。
「あれ? 香坂じゃん」
……出たな。じゅんぺい。
さきちゃんの顔が、何故だか、ポッと赤くなる。急に、そわそわ。
はやぶさ号を連れたじゅんぺいが、「よお」と声をかけて、近付いて来る。
ムカついたから、唸ってやった。こっち、来んなよ。
ぼくは、なんか、お前が嫌いだ。
さきちゃんは、もっと、忙しくなり、お散歩は、ママの仕事になった。
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