トモダチ 〜 さきちゃんと ぼく 〜 ( / 5 ページ ) 
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 ぼくは、十五歳になった。
 さきちゃんは、二年前に、 " せいじんしき " ってヤツをした。
 
 さきちゃんは 、とても、綺麗になった。すれ違う奴が、振り返るほど。
 そいつが、さきちゃんを賞賛して、ピーと口笛を吹く。
 さきちゃんは、慌てて、ぼくを引っ張るけれど、ぼくは、とっても、鼻が高い。ぼくの自慢の、さきちゃんなのだ。
「少し、休もっか」
 道にへたり込んだぼくの背中を、さきちゃんが、優しくさすってくれる。
 どういう訳だか、あんまり長くは、歩けなくなった。
 後ろ足が、上手く動かないのだ。最近では、みんなが帰って来る足音にも、気がつかないで、ぐっすり眠り込んでしまうことも多い。
 でも、勘違いしないでほしい。
 みんなのお出迎えが、面倒になったわけじゃない。
 みんなが嫌いになったわけじゃない。
 みんなが笑ってくれれば、ぼくは、幸せ。
 さきちゃんが笑っていれば、もっと、幸せ。
 
 さきちゃんは、もっと、もっと、忙しくなって、" かいしゃ " から、戻って来られなくなった。
 だから、ぼくとは、あんまり遊べなくなった。
 いつの間にか、ぼくの言葉も通じなくなった。
 リードをくわえて散歩に行こうと誘っても、さきちゃんには、分からないみたいだ。
「……ごめんね、これから、お出かけなのよ」
 さきちゃんが、すまなそうに、ぼくの頭を撫でる。また、ダメなの?
 
 でも、
 さきちゃんが笑ってくれれば、ぼくは、幸せ。
 
 うん。待ってる。
 外から、さきちゃんが帰ってくるのを、ここで、じっと待ってるよ。
 楽しい思い出を引っ張り出して、少しずつ、少しずつ、かじりながら。
 今度こそ、足音を、聞き逃したりしないように。
「じゃあ、行ってくるね」
 
 うん。いってらっしゃい。
 ぼくは、パタパタと尻尾を振る。
 さきちゃんは、今日は、じゅんぺいと " でーと " だ。
 
 
 

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