トモダチ 〜 さきちゃんと ぼく 〜 ( 4 / 5 ページ )
( 前 / TOP / 次 )
ぼくは、十五歳になった。
さきちゃんは、二年前に、 " せいじんしき " ってヤツをした。
さきちゃんは 、とても、綺麗になった。すれ違う奴が、振り返るほど。
そいつが、さきちゃんを賞賛して、ピーと口笛を吹く。
さきちゃんは、慌てて、ぼくを引っ張るけれど、ぼくは、とっても、鼻が高い。ぼくの自慢の、さきちゃんなのだ。
「少し、休もっか」
道にへたり込んだぼくの背中を、さきちゃんが、優しくさすってくれる。
どういう訳だか、あんまり長くは、歩けなくなった。
後ろ足が、上手く動かないのだ。最近では、みんなが帰って来る足音にも、気がつかないで、ぐっすり眠り込んでしまうことも多い。
でも、勘違いしないでほしい。
みんなのお出迎えが、面倒になったわけじゃない。
みんなが嫌いになったわけじゃない。
みんなが笑ってくれれば、ぼくは、幸せ。
さきちゃんが笑っていれば、もっと、幸せ。
さきちゃんは、もっと、もっと、忙しくなって、" かいしゃ " から、戻って来られなくなった。
だから、ぼくとは、あんまり遊べなくなった。
いつの間にか、ぼくの言葉も通じなくなった。
リードをくわえて散歩に行こうと誘っても、さきちゃんには、分からないみたいだ。
「……ごめんね、これから、お出かけなのよ」
さきちゃんが、すまなそうに、ぼくの頭を撫でる。また、ダメなの?
でも、
さきちゃんが笑ってくれれば、ぼくは、幸せ。
うん。待ってる。
外から、さきちゃんが帰ってくるのを、ここで、じっと待ってるよ。
楽しい思い出を引っ張り出して、少しずつ、少しずつ、かじりながら。
今度こそ、足音を、聞き逃したりしないように。
「じゃあ、行ってくるね」
うん。いってらっしゃい。
ぼくは、パタパタと尻尾を振る。
さきちゃんは、今日は、じゅんぺいと " でーと " だ。
短編小説サイト 《 セカイのカタチ 》 / 童話館 《 ぐるぐるの森 》